我々は門脈結紮後に出現する幹細胞の存在に注目し、(1)同細胞を内胚葉特異的抗体を用いて識別・分離、(2)分離された細胞のin vitroにおける増殖性・分化能力の検討、(3)肝細胞以外の内胚葉由来細胞への分化可塑性の検討(特に膵内分泌細胞への分化の可能性の検討)、(4)肝幹細胞移植による肝障害モデルの病態改善に関する検討を行うことを、本研究の趣旨としている。 我々はすでにマウス門脈結紮モデルを確立しており、同モデルを用いて門脈結紮(塞栓)後代償性肝再生に導入されている可能性のある未分化細胞(肝組織特異的幹細胞様細胞)を分離し得た。同細胞は種々のファクター(細胞外マトリックス及び液性因子)の変更により肝・胆管細胞へとそれぞれ分化しうるbipotetiallityを有し、特に胆管細胞分化環境においては正常の胆管組織に類似した組織構築を再現しうることを見出した。本内容は種々の学会にて報告したほか、現在論文として投稿中である。 現在この未分化細胞を用いて、内胚葉由来非肝臓細胞への分可能、特に膵臓β細胞への分化能を有するか否かの検討(Plasticityの確認)を施行中である。この解析系においては、膵臓発生特異的遺伝子の導入により、この可塑性の効率化が得られるか否かについても、併せて検討していく。 またこの細胞を効率的に分離するため、マウスES細胞を用いた肝組織誘導系を用いて、内胚葉への分化に際して特異的に発現する蛋白質の同定及び門脈結紮術後肝組織での発現解析を進めている。
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