研究課題/領域番号 |
21390376
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
今野 弘之 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00138033)
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研究分担者 |
瀬等 光利 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20302664)
太田 学 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (40397394)
神谷 欣志 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (20324361)
瀬戸口 智彦 浜松医科大学, 医学部附属病院, 医員 (80436956)
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キーワード | 消火器悪性腫瘍 / 分子標的治療 / 転移機構 / 悪性化 / 網羅的解析 |
研究概要 |
1.大腸癌肝転移機構の解析(premetastatic nicheとmiRNA) 大腸癌原発巣と肝転移巣の腫瘍細胞におけるmicro RNA (miRNA)発現をmicroarrayにて比較検討したところ、数個のmiRNAが肝転移巣において発現亢進していた。このうち、最も発現が亢進していたmiR-122に注目。miR-122は肝特異的miRNAとして報告されており、腫瘍細胞でmiR-122発現が亢進することにより、転移先である肝の微小環境に適応している可能性が示唆された。さらにmiR-122の代表的な標的遺伝子であるcationic amino acid transporter 1 (CAT1)タンパクの発現を原発巣および肝転移巣にて比較検討したところ、肝転移巣で有意にCAT1発現が低下しており、原発巣におけるCAT1発現低下を認めた症例は、無肝転移再発期間が有意に短縮していた。以上より、miR-122発現亢進に伴うCAT1タンパク発現低下が大腸癌肝転移形成促進に寄与している可能性が示唆された。 2.胃癌における脂質異常の解析 MALDI-TOF-MS質量顕微鏡観察をヒト胃癌の切除標本に対して行い、非腫瘍部の粘膜に比べ腫瘍病変部においてphosphatidylcholine(16:0,18:1)が豊富に存在することを明らかにした。PhosphatidylcholineのremodelingはLands' cycleと呼ばれる代謝経路によって行われており、lysophosphatidylcholineをアシル化してphosphatidylcholineを合成する酵素としてLPCAT1が同定されている。このLPCAT1は大腸癌病変部において正常粘膜と比べて過剰に発現していることが報告されており、われわれの実験でもLPCAT1が胃癌病変部において強く発現することが示された。さらに未分化型に比し分化型でphosphatidylcholineおよびLPCAT1発現が強かった。胃癌発癌過程におけるLPCAT1高発現とこれに伴う脂質代謝の変化が、胃癌の臨床病理学的特徴を規定している可能性があり、さらに癌の悪性化や転移機構に関与している可能性も示唆される。現在、肝におけるLPCAT1の発現や脂質の解析を施行中である。
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