研究概要 |
平成23年度は、GFP標識ヌードマウスの脾臓にRFP標識大腸癌細胞株を接種させた大腸癌肝転移モデルを用い、転移標的部位である肝臓で癌細胞が周囲の間質応答を伴いながらどのように増殖、進展するのかを継時的に二光子励起顕微鏡を用いて生体内観察した。とくに肝転移巣における腫瘍血管では血管内皮に血小板が凝集する像が得られ,腫瘍血管内皮細胞の未熟性もしくは何らかの凝固異常が生じていると考えられた。転移巣において着床したsingle cell levelの癌細胞がどのように増殖していくのか、すなわち、肝類洞内増殖か肝類洞外遊出後に増殖するのかを生体内観察中である。また、5-fluorouracilやirinotecanに抵抗性を示す肝転移巣の癌細胞と周囲間質細胞の生体内観察を行い、抗癌剤抵抗性癌細胞の形態学的特徴を捉える予定である。さらに、抗癌剤抵抗性肝転移巣における腫瘍血管では、さらに血流低下と血小板凝集が亢進しており、形態学的変化を分子生物学的手法も用いながら解明する予定である。上記結果は国内外の関連学会および関連雑誌に精力的に発表してきた(TanakaK,et al.2011AACR annual meeting,Tanaka K,et al.2011ASCO annual meeting,Tanaka K,et al.Microsc Res Tech.2012,Tanaka K,et al.J Oncol.2012)。 さらに、アゾキシメタン(Azoxymethane:AOM)/デキストラン硫酸ナトリウム(Dextran sulfate sodium:DSS)誘発自然発生大腸癌細胞を用いた同種移植肝転移モデルを用いることで、免疫系が正常な状態での腫瘍-宿主相互作用の関与も検討中である。以上、二光子励起顕微鏡で可視化できたものを分子生物学的に検証し、癌細胞と宿主細胞間の様々な応答のメカニズムを解明していく。
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