研究概要 |
膵癌は癌死の5位を占めながら現在も100人中3人しか根治しない疾患であり、その治療法および診断法の開発は社会的要請度・緊急性が高い。本研究は、ヘテロな膵癌細胞集団において従来解析が困難であった特定の微量細胞集団を同定し、予後や再発、治療抵抗性に関わる細胞集団の生物学的悪性度をプロファイリングし、さらにその細胞集団をターゲットとした細胞特異的な標的分子を同定し、次世代個別化治療を開発することを目的として以下の解析を進めた。 (1) prospective isolationのための高悪性度癌細胞集団特異的表面マーカーの検索 in vitro invasion assayを行い、浸潤した細胞集団(高悪性度癌細胞集団)を収集して遺伝子発現解析を行った。現在in vivo担癌マウスモデルで浸潤癌細胞や転移癌細胞集団を採取すべく実験を行っている。今後はこれらの細胞集団を純化して高悪性度細胞集団を同定し,網羅的発現解析を行う予定である。また現在、手術切除膵癌組織の凍結切片から浸潤部や転移巣の細胞集団をレーザーマイクロダイセクションにて選択的に採取しており、網羅的発現解析の準備を進めている。 (2) 表面マーカーを用いた微量高悪性度細胞集団同定と分離 過去に報告された表面マーカーを用いて、腫瘍内で重要な役割を果たすと考えられる微量細胞集団の純化を行った。CD44,CD24,c-Met,CD133など様々な表面マーカーを用いて、特定の細胞集団を純化・選別した。これらの細胞集団のうち特定の間質細胞との共培養、共移植により、浸潤能や転移能などが著しく増強する分画を認め、さらに、EMT、癌間質相互作用など固形癌に特有な現象についても解析を行った。 (3) 同定・純化した微量細胞集団の生物学的悪性度のプロファイリング 前述の細胞表面マーカーにより細胞株あるいは手術切除組織から悪性度が高い細胞を純化し、抗癌剤感受性や放射線感受性、浸潤能、転移能、癌間質相互作用、EMT関連分子発現など固形癌に特有な生物学的悪性度をin vitroで検討し、現在in vivoでの実験も行っている。
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