研究概要 |
術前化学放射線療法は、直腸癌外科治療後の局所は再発率を低下させる上で有用な補助療法であることが示されている。しかし、その効果は、症例により異なることが知られているが、現在、化学放射線療法を行う前にその効果を予測する方法は確立されていない。そこで、本研究では、直腸癌組織の遺伝子発現をDNAマイクロアレイを用いて解析することにより、術前化学放射線療法施行前に、その効果を予測できるか検討を行った.化学放射線療法後に手術施行した直腸癌40症例を対象とした。切除標本の病理学的検討により18症例は、大腸癌研究会取り扱い規約でgrade 2以上の照射効果が認められ(responder)、22例はgrade 1であった(nonresponder)。化学放射線療法前に採取された大腸癌組織の凍結標本よりSepazolを用いtotal RNAを抽出し、T7-oligo(dT)24 primerを用いcDNAへ逆転写後、biotin標識cRNAを合成し、Affymetrix社のGeneChipにハイブリダイズして約54,000種類の遺伝子発現解析を行った。次に、responderとnonresponderの間で、発現の差のあった142遺伝子を抽出した。これらの遺伝子には、細胞増殖、アポトーシスなどの関連遺伝子が含まれていた。次に、これらの遺伝子を用いて、照射効果の予測式を作成した。予測式を作成する際には、GeneSpring (silicon genetics社)を用い、leave-one-out法の一種であるk-nearest neighbor method(KNN法)にて行った。この結果,65.0%の精度で照射効果の予測が可能であった.効果予測を臨床応用するためには、さらなる精度の向上が必要なため、今後は、症例数を増やし、予測式の精度向上を行っていく予定である。
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