研究概要 |
術前化学放射線療法をより有効に行うために、直腸癌組織の遺伝子発現をDNAマイクロアレイを用いて解析することにより、術前化学放射線療法施行前に、その効果を予測できるか検討を行った。化学放射線療法後に手術施行した直腸癌64症例を対象とした。切除標本の病理学的検討により32症例は、大腸癌研究会取り扱い規約でgrade2以上の照射効果が認められ(responder)、30例はgrade1であった(nonresponder)。化学放射線療法前に採取された大腸癌組織の凍結標本よりbiotin標識cRNAを合成し、Affymetrix社のGeneChipにハイブリダイズして約54,000種類の遺伝子発現解析を行った。46例をトレーニングセットとして、responderとnonresponderの間で、発現の差のあった24遺伝子を抽出した。これらの遺伝子を用いて、照射効果の予測式を作成した結果,93/5%の精度で照射効果の予測が可能であった。次に予測に用いた24遺伝子の発現解析をQuantitative reverse-transcriptase polymerase chain reaction(RT-PCR)により、GeneChip解析結果を検証し、16遺伝子を確定した。予測遺伝子数を16から1遺伝子まで変化させ、あらゆる組み合わせで検討した結果、効果予測の精度は、LRRIQ3,FRMD3,SAND5とTMC7の4遺伝子で予測を行った際に、89.1%と最も高率であった。次に、独立した16例をテストセットとして、検証を行った結果、81.3%の精度で予測可能であった。この4遺伝子によるRT-PCR解析により術前化学放射線療法施行前に、その効果を予測できる可能性が考えられた。
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