研究概要 |
高度低体温により誘導される蛋白質発現・リン酸化の網羅的解析をヒト(手術時にサンプル採取)と動物実験により行う計画であるが、この初年度の実績を以下に示す。 (1) 高度低体温を用いて行う胸部大動脈手術9例とコントロールとする常温で行う胸部大動脈手術1例で、それぞれ組織・血液を採取し、今後のプロテオミクス解析に備え保存中である。症例数としては、コントロールとなる常温手術例がやや少ないが、高度低体温手術例数は予定通りであり、今後解析を進めたい。 (2) ラットを用いての表面冷却実験では、常温、34℃、28℃、23℃及び復温群の作成に成功して、組織・血液を採取し保存している。現在、各群でN=1~2でサンプル採取に成功しているが、今後は解析の結果を踏まえて冷却時間などの修正を行い、実験を重ねる予定である。また、今年後半からはマウスを用いた実験を開始する予定である。 (3) 冬眠動物におけるプロテオミクス解析でこれまでに判明している蛋白質発現に絞って(Hypoxia-inducible factor-1 (HIF-1) transcription factor, Connexin43 gap junction, Pyruvate dehydrogenase Kinase 4, etc)、軽度・中等度・高度低体温・常温・復温群の各ラット組織のwestern blottingを行ってきた。現在までのところ、大胸筋において高度体温例では常温例に比べてheat shock protein 70の有意な発現増加を確認している。その意義に関しては現在検討中である。今後解析条件を修正して、さらに解析を進める予定である。 (4) 解析の主な手段としている計画している二次元電気泳動では、現在サンプル調整、泳動条件について検討中である。今後すでに採取したサンプルの測定、解析を進める予定である。
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