研究課題/領域番号 |
21390389
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
織田 禎二 島根大学, 医学部, 教授 (50448198)
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研究分担者 |
松本 健一 島根大学, 総合科学研究支援センター, 教授 (30202328)
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キーワード | 低体温 / 冬眠 / 網羅的解析 / プロテオミクス解析 / 二次元電気泳動 / 胸部大動脈瘤 / 蛋白質発現変化 / 蛋白質リン酸化 |
研究概要 |
高度低体温により誘導されるタンパク質発現変化の網羅的解析をヒト(胸部大動脈瘤手術時にサンプル採取)と動物実験により行った。 1)これまでに高度低体温を用いて行う胸部大動脈瘤手術例より17例分のサンプル、コントロール群に設定した手術例より6例分のサンプルを確保した。両群からデータの揃った、常温5例、低体温7例について、心筋組織(右房壁)を冷却前、冷却中、復温後で異なるiTRAQ試薬によるラベル化を行いnanoLC-MALDI-TOF/TOF MS/MS法による解析を終えて、現在データを解析中である。その後血清サンプルについて同様に検討し、さらにタンパクのリン酸化についても検討を行う。 2)ラットを用いて低体温を導入する実験を行い、肝臓、心臓における低体温導入に伴う解析をDIGE及び質量分析(MALDI-TOF/MS)にて行った。 3)23度の高度低体温と常温コントロールでラット肝臓サンプルを比較して以下のタンパク質発現変化を有意に認めた。A)264個の有意に変化したDIGEスポット中、増加したスポット:101個、減少したスポット:163個、B)質量分析で最終的に特定できた蛋白は23個で、うち21個は低体温導入で減少した蛋白、2個は増加したタンパク質であった。C)減少したタンパク質は尿素回路中の酵素:3蛋白質、heat shock protein:7タンパク質、抗酸化蛋白質:3タンパク質、酸化的リン酸化/ATP産生:2タンパク質などであった。D)反対に増加した蛋白は、脂肪酸のベータ酸化を促す酵素:1蛋白質、抗炎症作用が注目されている蛋白:1蛋白質であった。 4)心筋組織においては軽度低体温(34度)では有意の発現変化を示す蛋白質は認められなかった。高度低体温(23度)と常温での比較では以下の発現変化を有意に認めた。A)304個の有意に変化したDIGEスポット中、増加したスポット:66個、減少したスポット:238個、B)質量分で同定できた蛋白質は12個で、すべて低体温導入で減少した蛋白であった。C)これらの蛋白質はおもにATP産生、収縮蛋白に関連するものであった。
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