研究の目的である小型肺腺癌における悪性化シークエンスの分子的機序を解析すべく、研究実施計画において挙げた1)小型肺腺癌GGO/Solid混在病変の収集2)GGO/Solid混在病変における網羅的な遺伝子発現・遺伝子増幅比較3)候補遺伝子の機能解析の中で、平成22年度は1)と2)および3)の一部を施行した。術前の薄切CT所見に基づき、GGO/Solid混在病変を有する小型肺腺癌手術症例の選定を行った。手術後に病理組織診断にて進行癌成分とBAC成分を含む、本研究において適切な病変であることを確認し、あらかじめ手術時に採取しておいたGGO/Solid混合病変を用いて凍結標本の作製を行った。次にBAC成分と進行癌成分、すなわち浸潤部と非浸潤部における腫瘍細胞のみを厳密にレーザー・マイクロダイセクション法により選択的に採取し、それぞれの採取した検体においてtotal RNAを抽出した。抽出したRNAのクオリティチェックを行い、微量のmRNA及びゲノムDNAを最新の分子生物学的手法により増幅した。増幅したRNAをDNAマイクロアレイに供することで浸潤部と非浸潤部との遺伝子発現の違いを網羅的に比較した。浸潤部において有意に高く発現する候補遺伝子について、既知の事象との比較、RT-PCRによるその他の症例における再現性を確認した。再現性が確認された遺伝子から最も浸潤部発現と非浸潤部発現の比率が高いものを選び、クローニングを行った。初期段階と考えられる肺腺癌細胞株を用いてトランスフェクションを行い、表現型やその他の遺伝子発現が進行癌のそれへと形質転換するかを検討した。また、浸潤部と非浸潤部を同一病変内に有する小型腺癌において、選択した候補遺伝子に対応するタンパク発現を免疫組織染色にて検討した。 今後は、免疫組織染色における発現パターンと臨床データとの関連性の検討および、候補遺伝子のさらなる機能解析を行う予定である。
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