研究概要 |
肺癌は多数の臓器に転移を来すが,転移の生じる臓器は症例により異なる.どの臓器に転移しやすいかについて症例ごとに個性が異なると考えられる.個々の臓器への転移のしやすさを予測する遺伝子マーカーの検索はこれまで殆んどなされていない.本研究は,組織培養法を応用して複数臓器への同時多発転移をsimulateしたin vitroの実験系に,多数のヒト非小細胞肺癌細胞株をapplyし,マイクロアレイを用いて転移先臓器決定遺伝子群の同定を行うものである.具体的には,ヌードマウス摘出臓器片(肺,肝,腎,副腎,骨,筋)をヒト非小細胞肺癌細胞株とともに組織培養し,培養組織に生着,浸潤した細胞亜株を回収し,臓器上培養を繰り返した後の細胞性状の変化をマイクロアレイにて比較する. 現在,腺癌の細胞株を中心に検討しており,PC-14を肺,肝,腎,副腎,筋,骨で継代したもの,A549を肺,肝,腎,副腎,筋,骨で継代したもの,VMRC-LCDを肺,肝,腎,副腎で継代したもの得,それぞれoriginalの細胞株からの遺伝子発現の変動をマイクロアレイで比較した.臓器ごとに共通の変動を他臓器変動とt-検定にて比較して検出し,そのうち,1.5 fold以上の変動を示した遺伝子群を選出した.これらは転移の臓器特異性を決定する候補と考えられる.肺,肝,腎,副腎,筋,骨について,それぞれ22, 212, 25, 76, 27, 141の候補が得られた.さらに、新規の細胞株であるRERF-LC-KJについて同様に調整を行い,マイクロアレイで評価した,現在、解析を続行中である.また,発現状況の変化から、副腎転移においてはsteroid耐性因子であるCALB1遺伝子の増強が有力名候補と考えられる.本実験系の妥当性の検証を兼ねて,CALB1発現とsteroid耐性の関連について評価を行っている.
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