研究概要 |
1)遺伝子導入効率向上のためのベクターの検討と心筋への遺伝子デリバリー法の評価 遺伝子導入を用いた心筋再生療法において、重症不全心に十分に心機能改善効果が見込まれる方法を検索するため、小動物(ラット)を用いて、新規開発したウイルスを用いないカチオン性合成ベクター(スターベクター)の遺伝子との至適混合比と何分枝のベクターが最も有効であるか動物実験を用いて比較検討した。Wistar系雄ラット16匹を用い、2,4,6分枝の当ベクターとラックZマーカー遺伝子を組み込んだプラスミドを1-40倍の比で混合し、開胸下で心筋直接注入法により遺伝子導入し、3日目に心筋を摘出し染色後観察した。対照として市販のベクターを用いた群、プラスミド遺伝子のみを注入した群と比較した。開発したベクターを用いた群は他の2群に比べて心筋が濃染されており、中でも混合比20倍の6分枝が最もin vivoでの心筋への遺伝子導入効率が高いことがわかった。またデリバリー法を大動脈と肺動脈を遮断中に経冠動脈的に注入するcross clamping法にて導入したところ、同法の方が心筋の広範囲に導入可能であった。以上より開発したベクターは、6分枝で遺伝子混合比20倍の条件で心筋へのin vivo遺伝子導入が最も有効となり経冠動脈的なデリバリー法が効果的で有るとことが示された。 2)補助循環下心筋再生療法評価のための大動物モデルの確立 近年、臨床では定常流ポンプを用いた左心補助循環が主流であるため、同ポンプを用いた大動物モデルの確立に着手した。成山羊に対して手術的に遠心ポンプと左室心尖脱血、下行大動脈送血による左心補助循環を作成した。同法にて2-4週間の慢性実験が可能であることが示された。
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