研究課題
G47△は腫瘍特異的なウイルス複製能に優れ且つ安全性が高い第三世代の遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスI型(HSV-1)で、平成21年度より再発膠芽腫患者を対象とした臨床研究が開始された。本研究は、G47△の基本骨格に外来配列を直接組み込んで特殊機能を有する遺伝子組換えHSV-1を作製して脳腫瘍治療に応用する。本年度は、腫瘍特異的プロモータを活用し、第三世代HSV-1の抗腫瘍作用を更に強化した腫瘍治療用HSV-1を作製した。脳腫瘍のウイルス療法には、特にhTERTプロモータが有用であり、G47△で不活化された3つのウイルス遺伝子のうち、ICP6遺伝子をhTERTプロモータで制御した新しい腫瘍治療用HSV-1を利用した。この新型の腫瘍治療用HSV-1(T-hTERT)は、宿主が腫瘍細胞であれば、ICP6遺伝子がコードするribonucleotide reductaseを自ら発現することになるため、宿主となる腫瘍細胞のribonucleotide reductase活性に左右されることなくウイルス複製を得ることができる。従って、髄膜腫のように緩徐に増大する良性腫瘍や、自らの増殖能はそれほど高くないグリオーマ幹細胞などでも高いウイルス複製能が得られると期待される。実際、膠芽腫患者から単離したグリオーマ幹細胞を用いて、その殺細胞作用や複製能を対照ウイルスT-01と比較したところ、緩徐に増殖するグリオーマ幹細胞では、T-hTERTが有意に強くsecondary sphere formationを抑制した。またグリオーマ幹細胞を用いたマウス脳腫瘍モデルでも、T-hTERTはT-01より有意に高い抗腫瘍効果を示した。腫瘍特異的プロモータを活用した遺伝子組換えHSV-1は、特に腫瘍幹細胞の割合が高い脳腫瘍に有効であることが示唆された。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件)
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