研究概要 |
本研究は、治療困難な難治性てんかんに対する新たな治療法の開発を目的として、「大脳皮質における過剰同期性の特性解析とその抑制」をキーワードに、動物実験研究と臨床てんかん研究の両側面を総合的に進めるものである。平成24年度の実績は以下の通りである。 (1)ヒトてんかん臨床例でのECoG-unit同時記録のシステムを確立した。今年度は、側頭葉てんかん5例に約4週間の留置を行い、多点皮質脳波と単一ニューロン発射の同時記録を行った。記録効率・記録安定性について解析し、論文発表に至った(Matsuo et al. Neurosurgery, in press). (2)ラット迷走神経刺激(VNS)モデルを用いて、VNSによるてんかん発作抑制機序に関する研究を行った。ラットにVNSシステムを植込んだ後、微小電極アレイを大脳皮質に刺入し記録を行った。解析の結果、VNSが大脳皮質神経活動の位相同期パターンを顕著に変化させることが明らかとなった。興味深いことに、健常状態ではVNSは局所的な同期を増大させるが、逆に、カイニン酸でてんかん発作を誘導した状態では、VNSは同期を減少させ、VNSによる恒常性維持作用が示唆された。 (3)迷走神経刺激臨床例におけるてんかん発作抑制機序に関する研究を行った。平成22年度に確立した迷走神経刺激療法臨床例における迷走神経誘発電位の測定記録をさらに進め、誘発電位の特性を明らかにし、臨床的な迷走神経刺激における上行性の神経伝達をはじめて証明した。これについて論文発表に至った(Usami et al. Brain Stimulation 2012 Oct 11 Epub)。
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