研究概要 |
最初に当施設でendoscopic endonasal transsphenoidal surgeryにより摘出された60例(15GH-oma, 10PRL-oma, 5TSH-oma, 6ACTH-oma, 24NF-oma)の下垂体腺腫に、抗SDF-1抗体と骨髄前駆細胞に特異的な抗CD34抗体を用いて、蛍光二重免疫染色を行った。SDF-1の発現と微小血管密度の関係をsubtypeや腺腫の浸潤のgradingなどで相関性を統計学的に解析し、さらには培養細胞を用いたELISA法により、低酸素刺激における下垂体腺腫細胞のSDF-1分泌を定量的に解析した。Subtypeにおける発現の相違には有意差がなく、SDF-1発現と微小血管密度に正の相関が見られた。この結果下垂体腺腫細胞にもSDF-1が発現しており、従来検討されたVEGFによる組織に既存の血管内皮細胞による血管構築とは別個に、SDF-1のhoming effectによって骨髄から血管内皮前駆細胞を誘導する機序が存在し、下垂体腺腫の血管新生に密接に関わっている事が示唆された。 一方では、パラフィン包埋した下垂体腺腫62例の組織からtissue microarrayを作成した。Mouse pituitary adenoma cell line(AtT-20)をコントロールとして、mouse recombinant SDF-1を添加した細胞、CXCR7をターゲットとしたshRNAをtransfectしてgene scilencingした細胞、さらにそのgene scilencingした細胞にSDF-1を添加した細胞それぞれからtotal RNAを抽出して、Cy3, Cy5の2色法でcDNA arrayでmRNAの発現を定量的に比較解析した(GenSpring GX)。CXCR7はGH-omaとPRL-omaに有意に発現が強かった。細胞増殖、cell cycleに関与する細胞内シグナルをBub1を介して制御していた。一方アミノ酸代謝をAsnsを介し、ligase activityをAsnsを介して抑制していた。 以上の結果から下垂体腺腫細胞にはSDF-1/CXCR7を介したautocrine signalingが存在する。
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