研究課題
分化・増殖の両立から十分な量の骨芽細胞とVEGF産生細胞を得る新たな培養法(バイオリアクター)の開発を目的に研究を行った。三次元培養の条件で細胞に機械的ストレスを加える装置の開発を行った。機械刺激が運動器細胞代謝に与える影響、特に細胞分化における機械的刺激の作用を調べた。ATDC5細胞あるいは骨髄間葉系細胞では、軟骨細胞、骨芽細胞に分化・増殖する過程での機械的刺激の付加条件により、軟骨細胞分化指標であるSOX9mRNA発現量、骨芽細胞分化指標であるRUNX 2mRNA発現量は共に変化することが確認された。過度な機械的刺激を加えると基質合成能が低下すると共に軟骨細胞分化から骨芽細胞への分化が遅延した。分化能遅延は運動負荷の軽減により回復した。基質産生能と細胞分化は平行しなかった。血管内皮細胞分化の検討は低酸素状態での静置培養系を確立する検討を進めたが、単なる低酸素状態と機械的刺激では達成が困難であった。低酸素条件でさらにズリ応力を加える装置を開発し、細胞源を変更することによりVEGF産生細胞の効率的分化の可能性を検討している。このズリ応力発生装置はGMP対応のバイオリアクターとして使用可能な状態である。従来血管内皮細胞をはじめとするVEGF産生細胞はズリ応力に反応することが知られている。この形質を利用する目的で、今回開発したズリ応力発生装置にて検討を開始したものである。組織幹細胞の採取源を工夫することにより高率にVEGF産生細胞を得るめどが立った。そこでこの細胞分化システムと前述のズリ応力発生装置を組み合わせてVEGF産生細胞のGMPレベルでの供給体制が構築できるものと期待している。.
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