研究概要 |
細胞表面に発現した種々の膜型蛋白質は蛋白質分解作用を受け,その細胞外領域が可溶型蛋白質として放出されることが知られている.この現象はectodomain sheddingと呼ばれ,遺伝子の翻訳後機能調節機構として重要な役割を担うことが近年,明らかとなっている.本研究では上述のectodomain sheddingにおいて中心的な機能を有するTNFα converting enzyme(TACE)と呼ばれる細胞膜結合型酵素に着目しその機能解析を行っている.本年度は研究代表者が過去に確立したTACE遺伝子改変マウスを利用し1)血液幹細胞増殖に関わる膜型増殖因子Flt3リガンドがTACEによって特異的に切断を受け,可溶化蛋白質となること,また同様に2)破骨細胞分化に必須の受容体であるRANKがTACEによって切断を受け,その結果破骨細胞分化シグナルが抑制されることをin vitro, in vivoで示した.Flt3リガンド,RANKはともに血液学,骨代謝で重要な位置を占めることからも,これらの遺伝子のectodomain sheddingによる翻訳後機能調節の一端を明らかにした本研究結果は,血液幹細胞分化,破骨細胞分化の理解の一助となることが期待される.またこれまでの研究からTACEを全身性に欠損した遺伝子改変マウスにおいて骨や造血器などに異常を呈することを観察しているが,本年度はより臓器特異的にTACEを欠損した遺伝子改変マウスを複数種作成し,これまで確認された表現系の解析を継続して行っている.
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