研究概要 |
細胞表面に発現した種々の膜型蛋白質は蛋白質分解作用を受け,その細胞外領域が可溶型蛋白質として放出されることが知られている.この現象はectodomain sheddingと呼ばれ,遺伝子の翻訳後機能調節機構として重要な役割を担うことが近年,明らかとなっている.本研究では上述のectodomain sheddingにおいて中心的な機能を有するTNFα converting enzyme(TACE)と呼ばれる細胞膜結合型酵素に着目しその機能解析を行っている.本年度は研究代表者が過去に確立したTACE遺伝子改変マウスを利用し,おもにTACEの軟骨細胞における機能の解析,および以前報告したTACE遺伝子改変動物で観察された造血異常を中心に解析を行った.軟骨細胞特異的にTACEを欠損したマウスは成長軟骨に異常を呈し,長管骨に約10%程度の短縮が観察された.また興味深いことに本変異マウスでは骨折治癒が遷延することが明らかとなった.現在,これらの表現系のメカニズムの解析を継続して行っている,さらに,骨代謝領域の研究では,小胞体ストレスに注目し,小胞体ストレス伝達経路の一つであるIRE1α-XBP1がBMP2にて誘導される骨芽細胞分化に重要な機能を担っていることを明らかにした(発表論文参照).現在,これと併せTACEの活性化における小胞体ストレスの関連を検討している.また生体におけるectodomain sheddingをより広く理解するためTACEの研究と平行し,類縁遺伝子であるADAM10のコンディショナルKnockoutマウスを作成し,現在TACE遺伝子改変動物と同様に骨組織および造血系に注目し表現系解析を行っている.
|