骨リモデリングは、破骨細胞(osteoclast)による骨吸収と、それに続く骨芽細胞(osteoblast)による骨形成からなる一連のプロセスである。本研究では、破骨細胞、骨芽細胞、さらに骨基質に埋まっている骨細胞(osteocyte)の細胞間コミュニケーションに焦点をあて、以下の二つの作業仮説に従い骨リモデリング機構を解明する。【作業仮説1】GPI-アンカー型の膜タンパクであるephrinA2と、その受容体であるEphA2あるいはEphA4の相互作用が骨リモデリング制御を担う。【作業仮説2】授乳期に母乳にカルシウムを動員するにあたり、骨表面の破骨細胞と骨細胞との相互作用が起き、骨細胞による骨融解がおこる。 平成21年度には、ephrinA2とEphA2/4に関して、破骨細胞と骨芽細胞それぞれのin vitroの細胞培養系で解析を行った。遺伝子とタンパクの発現を解析した後、レトロウイルスによる遺伝子導入実験などにより、ephrinA2のシグナルが破骨細胞分化を促進すること、ephrinA2がsheddingを受けることなどを明らかにした。一方、EphA2欠損骨芽細胞の分化が亢進することから、EphA2のシグナルは骨芽細胞分化を抑制することが示唆された。これらのことからephrinA2/EphA2の相互作用は、骨リモデリングにおいて骨吸収促進、骨形成抑制に働くものと推測される。次に、高輝度放射光施設SPring-8(兵庫)でX線微分位相顕微鏡を用いた3次元再構築データを解析し、マウス授乳期の腓骨における骨小腔(骨細胞が入っている骨基質中の空洞)の体積を測定した。非授乳期のマウスに比べて特定の部位に骨小腔体積の増加が認められた。骨細胞性骨溶解を示唆する骨小腔体積の増加を世界で初めて3次元的に捉えた(米国骨代謝学会に抄録投稿中)。
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