研究概要 |
骨リモデリングは,破骨細胞による骨吸収と,それに続く骨芽細胞による骨形成からなる一連のプロセスである。本研究では、破骨細胞、骨芽細胞、さらに骨基質に埋まっている骨細胞の細胞間相互作用に係る分子群を対象に、以下の二つの作業仮説に従い骨リモデリング機構を解明した。【作業仮説1】膜タンパクであるephrinA2と、その受容体であるEphA2あるいはEphA4との相互作用が骨リモデリングを制御する。【作業仮説2】授乳期に母乳にカルシウムを動員するにあたり、骨表面の破骨細胞と骨細胞との相互作用が起き、骨細胞による骨融解がおこる。 平成22年度には、EphA2ノックアウトマウスとEphA2阻害剤などを利用して、A型ephrinの生体内における機能を追求した。特にA型ephrin-Ephの遺伝子改変マウスから摘出した長管骨では、器官培養において、骨密度が3日以内に上昇することを見出し、EphA2阻害剤を器官培養系に加えたところ、骨密度の上昇が再現された。さらに、そのメカニズムを明らかにするために、阻害剤の有無で、骨芽細胞の分子生物学的、形態学的特徴を解析した(米国骨代謝学会2010で発表)。大理石骨マウスにおける耳小骨リモデリングについては論文発表を行った(Kanzaki et al.2011)。また骨硬化症を発症するFra1トランスジェニックマウスでは、間質性肺炎を発症することを見出した(Takada et al.2011)。さらに高輝度放射光施設SPring-8(兵庫)でX線微分位相顕微鏡を用いた3次元再構築データを解析し、マウス授乳期の腓骨における骨小腔(骨細胞が入っている骨基質中の空洞)の体積を測定した。非授乳期のマウスに比べて特定の部位に骨小腔体積の増加が認められた(米国骨代謝学会2010で発表)。
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