研究課題/領域番号 |
21390432
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
川真田 樹人 信州大学, 医学部, 教授 (90315523)
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研究分担者 |
川股 知之 信州大学, 医学部, 准教授 (80336388)
田中 聡 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (60293510)
成松 英智 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (70295343)
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キーワード | CGRPファミリー / 血管新生 / CGRP / アドレノメデュリン |
研究概要 |
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は、アミノ酸37個からなる塩基性ポリペプチドで、末梢神経系のC線維に豊富に存在することから、痛みの伝達・修飾物質として重要であるが、その詳細な機序は不明である。本研究では、臓器発生制御医学講座において独自に作製されたノックアウトマウスを用いて、CGRPファミリーであるCGRPやアドレノメデュリンが痛みに関与しているメカニズムを明らかにし、カルシトニン受容体様受容体(CLR)と受容体活性調節タンパク(RAMP)をターゲットとした、新たな鎮痛法の開発を目指している。 本年度は、前年度に引き続きαCGRP遺伝子欠損マウスとCGRP受容体拮抗薬であるCGRP_<8-37>を用いて、最も患者数が多い急性痛である術後痛モデル、および炎症性疼痛モデルを作製しその検討を行った。後肢足底皮膚を切開した術後痛モデルと炎症性疼痛モデルでは、CGRPの関与が異なることが示された。すなわち、αCGRPは術後痛モデルでの自発痛・機械性・熱性痛覚過敏には関与しなかったが、炎症性疼痛モデルでは、自発痛・熱性痛覚過敏に脊髄レベルで関与していた。また、術後痛モデルと比較し炎症性疼痛モデルは自発痛がより長く継続し、αCGRPは自発痛が24時間以上続く強く長い痛みに関与していた。免疫染色での検討は、これらの行動学的解析結果を支持し、患側脊髄後角表層でのCGRPが炎症24時間後の自発痛・熱性痛覚過敏に関与することが示唆された。また、患側脊髄後角表層でのc-fos発現の検討やCGRP受容体拮抗薬であるCGRP_<8-37>を用いた研究によっても、同様の結果が得られ、これら一連の研究から、疼痛を引き起こす病態および刺激のモダリティーによってCGRPの関与が異なることが明らかとなった。臨床における疼痛のタイプによって、CGRPをターゲットとした薬物開発の戦略を変更していくべきと考えられる。
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