研究課題/領域番号 |
21390433
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
荒井 俊之 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80175950)
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研究分担者 |
山下 浩平 京都大学, 医学研究科, 助教 (80402858)
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キーワード | 活性酸素 / 一重項酸素 / 神経様細胞 / 細胞死 / オートファジー / エダラボン / プテリン化合物 / 新規一重項酸素消去剤 |
研究概要 |
平成21年度は、ラット神経様細胞であるB50細胞を用いて、細胞外で発生させた一重項酸素が急性の細胞傷害を惹起すること、ならび一重項酸素消去剤エダラボンがその急性の細胞傷害を緩和することを示した。さらに元来有毒であるアジ化ナトリウムでさえも、その強力な一重項酸素消去能故に、急性の細胞傷害を緩和することを示した。この結果を踏まえて本年度は、マウス神経様細胞であるMG6を用いて、細胞内で発生させた一重項酸素が亜急性の細胞傷害を惹起することを示した。さらに、この亜急性の細胞傷害に対しては、強力な一重項酸素消去能を有するとはいえ元来毒性を有するアジ化ナトリウムはもちろんのこと、急性の細胞傷害で有効であった一重項酸素消去剤エダラボンも傷害緩和に有効でないことが分かった。これは細胞内で発生させた一重項酸素により亜急性の細胞傷害が惹起された場合は、急性の細胞傷害で見られるネクローシスのような単純な細胞死の機序ではなく、オートファジーのような複雑な細胞死の機序が生じることが、オートファジーに特徴的な電子顕微鏡像やオートファジーに特有の蛋白の出現をゲル泳動法やフローサイトメトリーで検出することにより確認できた。このことより、細胞内で発生させた一重項酸素が惹起する亜急性の細胞傷害の場合は、エダラボンは有効半減期が非常に短いため、オートファジーのように徐々に進行していく細胞死の機序を制御できず、細胞傷害が抑制できないのではないかと類推された。そこで、エダラボンに代わる有効半減期の長い新たな一重項酸素消去剤の合成を試みた。結果、プテリン化合物を基本骨格として、一重項酸素消去能はエダラボンにやや劣るものの、エダラボンにはないスーパオキシド消去能を有する試薬が、合成できた。しかし、この試薬の構造決定や、一重項酸素による細胞傷害に対する効果については、今後の検討課題となった。
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