研究概要 |
今回の研究の目的は、近年開発されたピコ秒パルス光による近赤外時間分光法(TRS)を用いて、心臓血管術後合併症のなかで重症な課題である脳障害の発生を早期に検出できるモニタリング法を確立し、それを基に理想的な周術期脳管理法の構築を目指すものである。昨年度(H22年度)は、新たなTRS6波長(690,730,760,780,800,830nm)を浜松ホトニクス株式会社と共同で開発し、その装置を用いて、cyt.ox絶対値測定に適した波長の決定と、新アルゴリズムを作成するための血液ファントムモデルを用いた実験を行った。本年度(H23年度)は、そのアルゴリズムを、in vivo実験モデル(ブタの心停止モデル)を用いて評価した。まず、ミニ豚(体重約15kg前後)にケタラール筋注後、気管挿管を行い人工呼吸下にセボフルランにて麻酔を維持し、筋弛緩薬は適宜追加投与した。6波長時間分解分光システムの計測はミニ豚頭皮を除去し、頭蓋骨にアクリル製のファイバ固定用の治具をアロンアルファにて2箇所に固定し、一方に送光用ファイバ、もう一方に受光用ファイバを固定した。ファイバ間の距離は約4cmとした。パルスオキシメータを耳にとりつけ、SpO2を連続的にモニタし、同時にetCO2(呼気炭酸ガス分圧)も測定した。人工呼吸器の換気条件を調節し、etCO2を35mmHgから60mmHgまで上昇させ、その後にetCO2を35mmHgまで回復させ、脳内酸素化状態の変化がどのように変化するのか、再現性があるのかを評価した。その間のFIO2は100%で管理した。次に、再度高炭酸ガス血症(etCO2:60mmHg)を作成し(cyt.oxが全て酸化状態と仮説)、その状態でKCL(塩化カリウム)を静脈注射し心臓を停止させた。この一連の実験における脳内酸素化状態の変化から、cyt.oxのシグナル変化がヘモグロビンから分けて測定できることを確認した。
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