研究概要 |
前立腺癌の腫瘍マーカーPSAは、良性疾患でも高値を示すだけでなく前立腺癌の組織学的悪性度を反映していないなどの問題点があり、新たな優れた腫瘍マーカーの開発が望まれている現状である。RM2は、申請者らが糖鎖抗原に対する抗体として作成したものであるが、前立腺癌組織では、悪性度を反映して前立腺癌細胞に反応することを見い出し、これまでの少数例の患者血清を用いた検討では、良性患者よりも前立腺癌患者で反応レベルが高いという結果が得られている。さらに、RM2抗体の認識蛋白を解析した結果、癌由来のハプトグロビンss鎖に選択的に反応することが判明し、RM2が認識するハプトグロビンss鎖(RM2-ハプトグロビンss)が新しい腫瘍マーカーになり得る可能性が期待されている。 そこで、今回、当科で前立腺生検を行った200例のうち、前立腺癌と診断がついた82例と、前立腺癌が否定された118例の患者それぞれの血清を用いて、PSA濃度とハプトグロビン濃度を市販ELISAキット(Assay Max Human Haptoglobin ELISA Kit(フナコシ,EH2003-1))を用いて測定した。ハプトグロビンは型により基準濃度範囲が異なるため、電気泳動で型を確認した。 その結果、(1)PSA濃度とハプトグロビン濃度との間には相関が無いことが判明した。(2)前立腺癌患者と非前立腺癌患者においても、ハプトグロビン濃度には明らかな差は認められなかった。(3)前立腺癌患者において、前立腺癌の悪性度を反映するGleason scoreに関しても、ハプトグロビン濃度との間には明らかな相関は認められなかった。 そこで、現在、患者血清中のRM2-ハプトグロビンssの発現を検討するために、効率良く測定するための方法を開発・検討中である。
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