研究概要 |
細胞の上下左右の方向性と他細胞との相互関係を調節する一連の既知の細胞極性制御分子や未知の極性関連分子に注目し,前立腺がん細胞や前立腺がん組織でプロテオミクス解析と局在分析を行い,前立腺がんの進行のターニングポイントとなる分子異常とその病態との関係の解明を試みた。 極性関連タンパクや細胞骨格関連タンパクなどの抗体を用いて,前立腺がん細胞と細胞が作る組織様構造を染色し,細胞増殖の様子やin vitro 3Dでの細胞相互の関係構築過程を調べた。また,極性制御分子の膜・細胞質での局在とその異常を解析した。 手術や生検より得たヒト前立腺がん組織及びヒト前立腺がん再燃組織を用いて,aPKCλ,IL-6抗体の発現の解析及び前立腺がんで細胞極性に関わることが予想される他の分子の発現を解析した。 その結果,aPKCλの発現を制限すると前立腺がん細胞の増殖が抑制されること,また,これには前立腺がん細胞よりオートクラインに分泌されるサイトカイン,特にIL-6が関わることが明らかとなった。さらに,IL-6の受容体が治療標的となりうるかどうかを特異抗体を用いて検討中である。 更に,aPKCλ及びIL-6に対する特異抗体による組織免疫染色を前立腺がん組織検体に対して行い、各分子の発現量と臨床像との関連性について検討した。その結果、前立腺がん組織ではaPKCλとIL-6の発現に強い相関性が認められた。aPKCλ及びIL-6の両分子の発現が高い検体では,生化学的再発に至るまでの期間が有意に短いことを明らかとし,aPKCλ-IL-6の経路が前立腺がんの進展に重要な役割を担っていること,更に診断マーカーや治療標的となりうることを明らかとした。
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