研究概要 |
微小環境での癌の浸潤性と形態変化 腎細胞癌97例を用いてEMTの指標であるE-cadherin発現を抑制する転写因子Snailの発現を免疫組織学的に調べた。その結果、Snail発現は原発巣の進展度、組織学的異型度および肉腫様腎細胞癌の合併の有無と相関していた。Snail高発現例は低発現例に比べ、再発率および死亡率が高い傾向がみられた。 Snail発現と癌細胞の浸潤・転移能の関係を調べるため、腎細胞癌由来の細胞株786-O, ACHNにおけるSnail発現をsmall interfering RNA(siRNA)を用いて抑制し、E-cadherinおよび細胞外マトリックス分解酵素であるmatrix metalloproteinase(MMP)-2, MMP-9発現を定量PCR法およびイムノブロット法により測定した。その結果、siRNAによりSnail発現を抑制するとE-cadherin発現が上昇するとともに、MMP-2とMMP-9の発現が低下し、in vitroでの癌細胞の遊走能、浸潤能が低下した。Snailは腎細胞癌の浮潤胞および進展に関連していることが示唆された。 骨転移巣における微小環境 腎細胞癌96例を対象に原発巣のRANKL発現を調べた。RANKL陽性細胞の比率は原発巣の進展度、遠隔転移と相関していた。骨転移巣に限らず、リンパ節、肝臓、皮下組織の転移巣でもRANKL, RANKが高発現していた。RANKL, RANKの作用は骨転移における臓器特異的転移に相関するというよりも臓器に関わらず転移に関わっていることが示唆された。 腎細胞癌細胞株Caki-1にリコンビナントRANKLを添加して培養すると癌細胞の遊走能が亢進し、その作用はRANKLのdecoy receptorであるOPGを添加することで抑制された。RANKLとRANKは癌細胞の遊走能を亢進し、骨転移のみではなく他臓器への転移に関与していることが示唆された。
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