研究概要 |
【目的】我々は卵巣癌腹膜播種モデルでのテロメラーゼ依存性腫瘍溶解ウイルスの有効性を示してきた.これらの結果は進行癌や抗がん剤抵抗性の癌においてもテロメラーゼ依存性腫瘍溶解ウイルスを用いた治療が有用である可能性を示したものである.本年は進行癌治療への基礎データとして癌幹細胞への有効性について検討した. 【方法】卵巣癌細胞株SKOV3をFACSにより表面抗原CD117とCD44の発現の有無で癌幹細胞の同定を行い、各分画を回収し,増殖能,コロニー形成能,マウスでの造腫瘍能を各々の分画で評価した.各々の分画に対してcisplatinとテロメラーゼ依存性腫瘍溶解ウイルスの効果をin vitroで検討した.またcisplatinならびにテロメラーゼ依存性腫瘍溶解ウイルス存在下でのCD117/CD44発現分画の変化を観察した. 【成績】CD117陽性CD44陽性の細胞分画は他の分画に比べてin vitroで高い増殖能とコロニー形成能を示し,またマウスでの造腫瘍能も高く癌幹細胞の候補と考えられた.この分画はcisplatinに対して抵抗性が高かったがテロメラーゼ依存性腫瘍溶解には高感受性を示した.またcisplatin存在下ではCD117/CD44発現分画の増加が認められたがテロメラーゼ依存性腫瘍溶解ウイルスの存在下ではこの変化は消失した. 【結論】CD117陽性CD44陽性の卵巣癌幹細胞はcisplatin抵抗性を示したがテロメラーゼ依存性腫瘍溶解には感受性であり,プラチナ抵抗制卵巣癌への応用あるいはプラチナ製剤との併用療法の有用性が示された.
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