研究課題/領域番号 |
21390451
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
佐川 典正 三重大学, 大学院・医学系研究科, リサーチアソシエイト (00162321)
|
研究分担者 |
杉山 隆 三重大学, 医学部付属病院, 准教授 (10263005)
梅川 孝 三重大学, 医学部付属病院, 助教 (80422864)
神元 有紀 三重大学, 医学部付属病院, 助教 (90422865)
村林 奈緒 三重大学, 医学部付属病院, 助教 (10378416)
溝口 明 三重大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90181916)
|
キーワード | 妊娠 / 糖脂質代謝 / インスリン抵抗性 / 高脂肪食 / 肥満 / 胎児プログラミング / 生活習慣病 / 脂肪組織の慢性炎症 |
研究概要 |
昨年度の研究では60%高脂肪餌を母獣に与えた群の胎仔(HFD60群)では10%脂肪餌を与えた群の胎仔(NCD群)に比して皮下脂肪組織にマクロファージ浸潤を認め、TNF-αなどアディポカイン発現亢進を認めた。その結果、脂肪組織でのGLUT-4発現の低下が生じインスリン抵抗性が惹起される可能性が示された。今年度は、このマウスモデルおよび45%高脂肪餌投与した母獣モデル(HFD45群)を用いて、母獣が高脂肪餌に曝された仔の成長後の血圧や耐糖能などを解析し、母体肥満や高脂肪食摂取が次世代の血圧や耐糖能に影響(プログラム)するか否かを検討した。 結果 1)新生仔の10週齢での体重は有意差がなかったが、HFD60群の血圧(110±5.8mmHg)は対照群(92±4.0)に比して有意(p<0.0001)に高値を示した。 2)10週齢時の糖負荷試験ではHFD60群で負荷30分後、60分後で有意(いずれもp<0.001)に高値を示し、耐糖能が低下することが判明した。 3)一方、インスリン負荷試験では両群間で有意差を認めなかった。 4)母獣に45%の高脂肪餌を投与した群(HFD45群)でも同様の検討を行ったところ、若年期(10週齢)では有意差を認めなかったが、成獣期(35週齢)になるとHFD60群と同様に血圧上昇と耐糖能低下を認めた。 5)HFD45群の腸間膜脂肪組織ではM1マクロファージの浸潤亢進を認め、M2マクロファージ発現には変化がなかったことから脂肪組織局所での慢性炎症が存在すると考えられた。 6)またHFD45群の脂肪組織ではadiponectin遺伝子発現の低下を認めた。 以上より、妊娠期の母体高脂肪摂取は次世代の血圧上昇や耐糖能低下をプログラムする可能性が示された。また、このようなプログラミングには母体の高血糖や高遊離脂肪酸血症に起因する胎仔脂肪組織の慢性炎症が関連している可能性があり、本マウスモデルは母体肥満や耐糖能異常妊婦における次世代の生活習慣病programming機序解明のツールとして有用であることが示された。
|