研究課題
1) 発現マイクロアレイ解析によって、卵巣癌の原発巣と大網転移巣の間で活性の異なるpathwayを検索したところ、β-catenin、Ras、Src、E2F3、Myc、TNFα、TGFβ経路のうちで、TGFβ経路のみが大網転移巣で有意に活性が亢進していた。そこで、TGFβの活性をあらわすリン酸化SMAD2の発現を卵巣癌の原発巣と大網転移巣13ペアで比較したところ、大網転移巣で有意に発現が亢進していた。マウス卵巣癌細胞株HM-1を用いて、TGFβ阻害剤A-83-01を添加すると、細胞浸潤、細胞運動、細胞接着が抑制されたが、細胞増殖は変化しなかった。HM-1細胞株によって、マウス腹膜播種モデルを作成し、A-83-01をin vivo投与したところ、マウスの生存期間を有意に延長した。したがって、TGFβ阻害剤は卵巣癌の播種性転移に対する治療薬として有望である。2) 卵巣癌細胞株39種類に脱メチル化剤decitabineを添加し、発現マイクロアレイ解析を行って、卵巣癌におけるメチル化候補378遺伝子を同定し、実際に43遺伝子でメチル化を調べたところ、いずれにおいてもメチル化を認めた。それら378遺伝子のうち、約100遺伝子は発現パターンがきわめて類似しており、かつTGFβ活性と正に相関していた。今回卵巣癌でメチル化を証明した遺伝子の中には、TGFβ活性と関連の深い、TGFBR2,TGFB2,THBS1などが含まれていた。そして卵巣癌細胞株へのdecitabine添加によって、TGFβ活性は亢進した。したがって、卵巣癌において、ゲノムワイドなメチル化状態はTGFβ活性を制御していることが明らかとなった。
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