研究概要 |
1)卵巣癌の腹膜播種性転移を認める10症例において、腹水中のリンパ球分画を調べたところ、CD8/CD4比や、Th1/Th2比の低下を認め、免疫抑制が播種性転移に関与していることが示唆された。これまでに我々は、TGF-beta経路が卵巣癌細胞の浸潤能、遊走能を促進させ、腹膜播種性転移を促進させることを明らかにしてきたが、TGF-betaは一方で免疫抑制をもたらすことが知られているため、卵巣癌腹水中の免疫抑制ももたらしていると考えられる。 2)卵巣癌において、CD1,CD4,CD8,CD57,FOXP3,PD1がそれぞれ陽性のリンパ球数、さらに、腫瘍細胞由来の免疫抑制分子であるPD-L1,PD-L2,COX-1,COX-2,TGF-β1の発現を免疫組織染色で調べて、hierarchical clusteringで分類したところ、CD4陽性リンパ球および、CD8陽性リンパ球が腫瘍内に浸潤している卵巣癌では、もっとも予後がよく、その他のタイプでは免疫抑制分子のいずれかの高発現を認めた。したがって、卵巣癌において、腫瘍細胞由来の免疫抑制分子が予後不良をもたらしており、同シグナルをブロックすることで予後が改善すると期待される。 3)TGF-beta superfamilyの一つであるBMP経路について調べた。BMP2の添加はin vitroで卵巣癌細胞の増殖を促進し、その阻害剤であるdorsomorphinは増殖を抑制した。マウスxenograftによる検討でも、同様の結果が得られた。したがって、BMP経路は卵巣癌における、新たな治療ターゲットと考えられる。
|