研究課題/領域番号 |
21390454
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
片渕 秀隆 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授 (90224451)
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研究分担者 |
田代 浩徳 熊本大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (70304996)
本原 剛志 熊本大学, 医学部附属病院, 医員 (10457591)
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キーワード | 上皮性卵巣癌 / 癌幹細胞 / 卵巣表層上皮 / 卵巣癌治療 / 卵巣癌モデル |
研究概要 |
わが国において、上皮性卵巣癌(卵巣癌)は近年著しい増加を示している。進行した卵巣癌の治療においては、抗癌化学療法が主体となるが、耐性癌細胞の出現は免れない状況であり依然として長期予後は不良である。卵巣癌においても自己複製能と分化能を有する癌幹細胞が存在すると考えられている。卵巣癌の癌幹細胞は正常幹細胞と同様に細胞周期の静止期にあり、薬剤耐性能も高いことから抗癌剤抵抗性を有していると考えられ、抗癌化学療法は癌幹細胞から複製されていく細胞に対してのみ作用し、癌幹細胞が残存した場合には再発を引き起こすことになる。今後、現在の抗癌化学療法に勝る治療法の開発のためには、この癌幹細胞に選択的に作用する薬剤が必要である。そのためには、癌幹細胞による卵巣癌モデルマウスを作成することで、癌幹細胞から癌腫形成に至る機序を解明していくとともにこれに関わるシグナルの抑制物質を見出すことによりこれまでにない新たな治療法の開発へと繋がる可能性が考慮される。 われわれは、卵巣癌の母細胞とされているヒト卵巣表層上皮を用いて染色体安定性の不死化細胞株を樹立し、この細胞に癌関連遺伝子を導入することで腫瘍形成性細胞株を作成することに成功した。しかし、in vivoで形成されたこの腫瘍の組織型は未分化癌であり、また多くの種類の癌関連遺伝子の導入が必要であったことから、樹立した不死化細胞を用いた実験の見直しを迫られた。そこで、われわれは先ず卵巣における組織幹細胞の同定を試みるために、マウス卵巣を用いることで網羅的に組織幹細胞の候補マーカーを検証した。その結果、マウス卵巣における組織幹細胞を含む細胞集団を見出し、それらの細胞集団に対する遺伝子操作によって癌化誘導を行うことで、癌幹細胞を頂点とする階層性を有する実験モデルを樹立することに成功した。
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