研究課題
本研究では、卵子とES細胞に着目し卵子の質がES細胞へ影響を与えるか解析し解明していくことで卵子の本質をとらえていく。卵子の質に影響を与える生物学的現象として加齢を対象として、加齢マウス由来の卵子から受精卵を作成しES細胞を作成した。ES細胞のDNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現結果をもとにしたバイオインフォマティックス解析により対象グループに比し細胞外マトリックス及び細胞間接着系に関連する遺伝子群の発現が有意に低下していることを見出してきた。細胞活動での機能分類では、"cell adhesion"、"biological adhesion"などの細胞接着の低下が示唆され、細胞成分に関する機能分類では"extracellular"に関する機能低下が示され、細胞外基質に関与する遺伝子の発現低下により加齢ES細胞では接着性に機能低下がおきていることが示唆された。遺伝子発現に有意差のあった遺伝子群から細胞接着及び細胞外基質に関連する遺伝子を抽出し、リアルタイム定量RT-PCR法解析を行った。Pcdhb20 (protocadherin alpha 20)、Spon2 (spondin 2, extracellular matrix protein)、Pcdhb6 (protocadherin alpha 6)やNrp 1(neuropilin 1)は遺伝子発現量が加齢ES細胞で有意に低下していることが確認され、定量的リアルタイムRT-PCR法によっても確認された。加齢モデルを構築し、卵細胞への影響を観察する実験システムは個体あるいはそれより得られるサンプルの希少性よりこれまで世界的にも十分な解析システムが構築されず、知見が得られてもバリデートするシステムを構築することは極めて重要である。本研究では、胚盤胞期胚の将来胎児となる内部細胞塊から樹立されるES細胞を加齢化モデルの胚より樹立しその特性解析から加齢化卵の多分化能性へ寄与する性質を体外培養系で探る実験系を構築した。加齢ES細胞の遺伝子発現で有意差のある遺伝子群の機能分類を試みた結果細胞の接着系の機能が低下していることが示唆された。ES細胞という分化多能性幹細胞に個体加齢の影響が投影されていることが示唆された。
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PLoS One.
巻: 5 ページ: e13017
Nature
巻: 465 ページ: 175-181