研究課題/領域番号 |
21390456
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
阿久津 英憲 独立行政法人国立成育医療研究センター, 生殖・細胞医療研究部, 室長 (50347225)
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研究分担者 |
豊田 雅士 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 副部長, その他 (50392486)
浜谷 敏生 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60265882)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ES細胞 / 卵細胞 |
研究概要 |
加齢ES細胞では、Wntシグナル関連遺伝子の発現低下が認められたため、Wnt-β-Cateninシグナルに注目した。β-Catenin遺伝子を精子及び卵子発生過程で組織特異的に欠損させた系を用いて、β-Catenin遺伝子欠損受精卵の胚盤胞への初期胚発生とその評価としてES細胞の作製を行った。すでに報告のあるノックアウト実験では、着床後すぐに(E6.5-7.0)胚性致死となるが、β-Catenin遺伝子欠損受精卵は胚盤胞まで発生することを確認した。次に、卵子の質の本質である全能性、その代替として分化多能性に与える影響を明らかにするために、胚盤胞からES細胞樹立を行った。胚盤胞の内部細胞塊(ICM)の必須な性質とて分化多能性があり、β-Catenin遺伝子欠損と分化多能性獲得の評価としてES細胞樹立検証の結果、ES様細胞の樹立に成功した。次に、このβ-Catenin遺伝子欠損-ES細胞の細胞特性を行った。細胞増殖能は野生型及びヘテロ型のES細胞同様の増殖能を持ち、自己複製能を持つことが明らかとなった。しかし、分化多能性の解析から、β-Catenin遺伝子欠損-ES細胞は外胚葉・内胚葉・中胚葉の各正常分化組織へ分化することがなく、明らかに分化多能性が欠落していた。これまで、加齢ES細胞の特徴として細胞接着系の遺伝子発現が低下していることを明らかにしてきたが、このβ-Catenin遺伝子欠損-ES細胞はα-CateninやE-Cadherinなどのタンパク質の発現に異常は認められなかった。しかし、γ-Catenin(Plakoglobin)は定性的な解析ではあるが、免疫組織染色で明らかに発現が上昇しており、β-Cateninの機能不全を補完していることが示唆された。今後は、卵子の質を反映するES細胞の評価を分子レベルで進め、初期発生に与える影響を解明していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たにβ-Catenin遺伝子欠損-ES細胞の樹立に成功し、細胞の質評価を行う重要なリサーチツールを構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
個体加齢が卵巣機能ひいては、卵細胞質へ与える影響は多岐にわたり、評価方法が難しいが恒常的に行うことができるES細胞を用いて解析する。そこで得られた結果を再度卵細胞で確認する連関した研究を展開する。
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