進行頭頸部癌に対しては、手術、放射線、抗ガン剤を用いた3者併用療法が行われるが、患者への侵襲は大きく、治療後のQOLを傷害する一方で、依然として疾患の予後は不良である。根治治療後の再発は遠隔転移によるものが多いが、これまで再発を予防するための有効なアジュバント療法は示されていない。これまでの検討でNKT細胞は強い抗腫瘍活性を有すること、NKT細胞は頭頸部癌に対する標準的治療の一つである放射線治療に対して抵抗性を有すること、NKT細胞活性化リガンドであるα-galactosylceramideをパルスした抗原提示細胞の鼻粘膜下投与は、少ない細胞量で有効に抗腫瘍免疫活性を誘導することを明らかにした。本研究では、頭頸部癌の中でも特に予後が不良である4期進行下咽頭癌と頭頸部悪性黒色腫症例に対して、α-galactosylceramideパルス抗原提示細胞の鼻粘膜下投与が有効なアジュバント療法になるかどうかについての検討を開始した。本年度は、まず倫理委員会、先端医療審議委員会への申請を行い、実施の認可を得た後に、進行下咽頭癌についてはα-galactosylceramideパルスしていない抗原提示細胞の鼻粘膜下投与を行う群とのランダム化試験により、悪性黒色腫症例についてはhistorical control studyとして臨床研究を進めた。進行下咽頭癌については6症例、悪性黒色腫については17症例について細胞免疫治療がすでに終了した。投与後の抗腫瘍活性の血中での増加、経過観察期間は短いが無病再発生存期間の延長が確認されている。症例数を増やして検討が進めている。
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