平成21年度においては以下のような研究実績を上げることができた。臨床における角膜内皮移植として広まりつつあるDescemet's stripping automated keratoplasty (DSAEK)の手法を用いた培養ヒト角膜内皮細胞移植の長期的な有効性を検討した。研究用輸入ヒト強角膜片から、人工前房装置を用いて厚さ120~150μm、直径8mmの角膜実質片を作製した。この実質片上に培養HCECを播種した上でさらに4週間の培養を行って培養DSAEKグラフトを作製し、組織学的、免疫組織化学的検討を行った。同様の方法で作成した角膜実質+培養角膜内皮細胞からなる移植片を使用して兎眼でDSAEKを行い術後1年間観察した。結果としては、培養DSAEKグラフトは培養中に浮腫でやや厚みを増したものの実質の層構造は保たれ、培養HCECは単層の細胞層を形成するとともに細胞間接着装置の存在も見られた。術後1年の段階でコントロールと比較して、培養HCEC群では角膜厚が薄く、透明性が保たれた。これらの結果より、培養DSAEKグラフトは有効な方法であり、臨床応用が可能であると考えられた。さらに平成21年度には、培養角膜内皮細胞移植の免疫学的な検討を行った。C3Hマウスの培養角膜内皮細胞をBALB/cマウスの角膜実質上に培養して作製したキメラ角膜をBALB/cマウスに移植したのちに、免疫学な検討を行ったところ、移植されたC3Hマウス由来の培養角膜内皮細胞は、ホストに認識されておらず、そのために拒絶反応がも全く起きなかった。このことから、アロの培養角膜内皮細胞の移植が、拒絶反応を起こす可能性が少ないことが分かった。
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