臨床における角膜内皮移植として広まりつつあるDSAEKの手法を用いた培養ヒト角膜内皮細胞移植の長期的な有効性を検討した。培養DSAEKグラフトは培養中に浮腫でやや厚みを増したものの実質の層構造は保たれ、培養HCECは単層の細胞層を形成するとともに細胞間接着装置の存在も見られた。術後1年の段階でコントロールと比較して、培養HCEC群では角膜厚が薄く、透明性が保たれた。これらの結果より、培養DSAEKグラフトは有効な方法であり、臨床応用が可能であると考えられた。 マイクロケラトームで厚い角膜フラップを作成しその下の後方角膜実質を採取し培養ヒト角膜内皮を播種する方法においても同様に、有効性、安全性が確認された。 無血清・無フィーダー培養下において高付着能を有する角膜上皮細胞シートを剥離できる新規温度応答性培養皿を開発し評価した。その結果、新規温度応答性培養皿では角膜上皮シートに含まれる高付着能部位を含めて剥離することが可能であり、一枚の角膜上皮シートとして剥離することが可能であった。今後この新規温度応答性培養皿を角膜内皮シート作成に応用する予定である。 さらにアスコルビン酸-2リン酸(Asc-2P)を用いた新たなヒト角膜内皮細胞培養法を検討した。その結果、アテロコラーゲンを基質とし、Asc-2PとbFGF存在下で培養することにより、初代培養は全例で良好な増殖を示し、継代を重ねても高い増殖能と角膜内皮細胞独特の敷石状の形態を維持した。Z0-1、Na^+/K^+-ATPaseは、組織角膜内皮と同等の発現レベルと類似の細胞内分布を示した。8-OHdGとMDAは、Asc-2Pを添加しない培地では継代毎に生成が増加したが、Asc-2P添加培地では生成が抑制された。Asc-2Pを用いて培養した培養ヒト角膜内皮細胞は、高い細胞増殖能と継代安定性を有し、組織角膜内皮細胞と類似の形態を示した。Asc-2Pは細胞内の酸化ストレスを減少させることにより細胞寿命の延長に寄与している事がわかった。
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