研究概要 |
高齢者の黄斑に生じる加齢黄斑変性age related macular degeneration (AMD)は、高齢化社会が進行中の我が国をはじめとした先進国において、成人の失明や視力低下の主因となっているが、現在AMDに対する根本的な治療はなく、その病因解明は社会的急務である。その発症には、遺伝的素因(体質)や環境因子など様々な因子が関与していると考えられている。本研究はAMDのゲノムワイド疫学研究によってAMDの遺伝的危険因子を同定しその病因を解明することを目的とする。AND罹患者および久山町健診受診者の健常者から採取した血液よりDNAを抽出し、加齢黄斑変性の発症および進展に影響を及ぼすSNPを体系的、網羅的なゲノムワイドアプローチにより解析する。 平成23年度の研究実施計画は加齢黄斑変性の遺伝子多型の解析であり、計画通り実施できた。具体的には、本遺伝子解析研究用の採血に同意された方に対し、従来報告のある既知の候補遺伝子(CHF,HTRA-1,APOE,ELOVL4,FBLN5,C2,BFなど)によるアプローチと体系的なゲノムワイドアプローチによるSNP解析を行った。血液より抽出したDNAは、理化学研究所にてSNP解析を行った。提供先機関は理化学研究所・ゲノム医科学研究センター基盤技術開発グループ多型解析技術開発チームである。また、SNPの解析者への情報は、匿名化IDのみを供与し、個人識別情報を含めない。患者群と対照群に対するゲノムワイド関連解析において約50万か所の一塩基多型(SNPs)を比較し、AMDの新しい関連遺伝子を探索した。本研究は既知の候補遺伝子によるアプローチと体系的なゲノムワイドアプローチによりSNP解析行うものであり、解析の結果、AMDのの発症あるいは進行に関与する複数の候補遺伝子が同定された。さらに同定された遺伝子の再現性を確認するため、Replicationとして新たに集団を設定して、遺伝子の関連解析を行った。
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