研究概要 |
開放隅角緑内障遺伝子オプチニュリン(OPTN)とWDR36の変異体トランスジェニックマウスを作製し、それぞれのマウスについて、病理学的解析、分子レベルでの解析が行われた。両遺伝子がユビキタスに発現していることから、両トランスジェニックマウスはアクチンプロモーターを用いて作製された。OPTNマウスについては、複数の変異体をそれぞれ発現するマウスの系が作製されたが、変異体E50Kのみに網膜の異常が観察された(Chi,Iwata et al.Hum Mol Genet 2010)。OPTN E50Kマウスにおいて、生後12ヶ月から網膜視細胞から網膜神経節細胞までの全視神経細胞での萎縮、視神経繊維の菲薄化が観察された。眼球内では網膜だけに異常が観察された。また、細胞内分子間相互作用の実験によって正常OPTNとRab8がゴルジ体上で相互作用し、OPTN E50K変異体によって相互作用が消失することを明らかにした。Rab8がゴルジ体から細胞膜への小胞輸送、分泌に関与することから、OPTN E50Kによって小胞輸送および分泌機能が障害されている可能性がある。同様な方法によって複数のWDR36変異体を高発現するマウスを作製したが、3つのアミノ酸605-607を欠損するWDR36を発現するマウスにおいて、最も重篤な網膜障害を観察した(Chi,Iwata et al.Hum Mol Genet 2010)。OPTN E50Kマウスと同様にWDR36 Del605-607マウスは網膜特異的に、そして周辺網膜に障害が集中している。これまでに緑内障マウスとして報告されているDBA/2JマウスやミオシリンT437H変異体と発現するとトランスジェニックマウスでは、何れも周辺網膜での障害が顕著である。我々の研究を含めると4つの例で緑内障における周辺網膜の障害が観察されたことになる。現在の技術において、周辺網膜を詳しく観察することは難しいが、今後、光干渉断層撮影(OCT)などの技術が発展し、周辺網膜の障害によって診断が可能になることが予測される。また、Vav2,Vav3のダブルノックアウトマウスを作製したところ、高眼圧マウスの作製に成功した(Fujikawa,Iwata et al.PLOS One 2010)。
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