研究課題/領域番号 |
21390475
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田口 智章 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (20197247)
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研究分担者 |
増本 幸二 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20343329)
野中 和明 九州大学, 大学院・歯学研究院, 教授 (90128067)
永田 公二 九州大学, 大学病院, 助教 (20419568)
家入 里志 九州大学, 大学病院, 講師 (00363359)
田尻 達郎 京都府立医科大学, 医学研究科, 教授 (80304806)
木下 義晶 九州大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (80345529)
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キーワード | 小児呼吸器外科学 / 横隔膜ヘルニア / 肺低形成 / 成長因子 / SNP-array / 責任遺伝子 / 幹細胞 / 再生医療 |
研究概要 |
先天性横隔膜ヘルニアの最重症例である横隔膜無形成(Diaphragmatic Agenesis)の治療として、低形成肺を成長させる治療法と無形成の横隔膜を再生する治療法を開発することである。具体的には以下の4つの研究からなっている。それぞれについて実績の進捗状況を述べる。 (1)低形成肺を成長させる方法の開発。低形成肺を肺胞および肺血管の両者の面から成長させる方法を、臓器培養の手技を用いて種々の成長因子を投与しその効果を評価する。 ニトロフェン誘導の先天性横隔膜ヘルニアモデルをマウスからラットに変えて行ったところ約40%に横隔膜ヘルニアが発生した。しかしラットの肺はマウスに比して大きいためにorgan cultureの手法で苦労したが、パラメーターを工夫することによりIGFの効果が評衝できるようになった。その結果培養液にIGF2を加えると肺成熟を促すことが証明された。 (2)横隔膜ヘルニアの責任遺伝子の検索。患児および母親のDNAをSNP-CGHarrayにてスクリーニングし肺低形成の原因遺伝子を追及し、遺伝子治療の基礎とする。 教室および関連病院にてフォローしている先天性横隔膜ヘルニアの患児および母親の採血を20例あまり行いDNAの抽出を行いSNP-arrayにてスクリーニングを行った。その結果捻non-isolated caseでTCTE3のmicrodeletionを検出し、責任遺伝子としての可能性を示唆した。 (3)腹壁筋フラップ法の評価。無形成の横隔膜を形成する方法として現在我々が臨床で用いている腹壁筋フラップ法について、術後の横隔膜の機能を胸郭運動測定装置やMRIを用いた横隔膜の運動で評価する。 教室で行った腹壁筋フラップ法の症例が増加し10例になった。外来フォローの一環として肺機能検査を症例ごとに積み重ねており、来年度はデータを集積して英文雑誌に報告する予定である。 (4)横隔膜再生医療。脱落乳歯の歯髄細胞を幹細胞のソースとして、分化誘導により肝細胞の機能を有する肝細胞様細胞の分化に成功した。今後、横紋筋細胞への分化の方向性を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の(1)(2)は結果を英文論文としてpublishできたのでほぼ目的を達成できたと考える.(1)の臨床への応用は次の課題である。(3)は臨床データの解析を行い今年度中には英文論文に投稿する。(4)は現在のところ幹細胞から横紋筋への分化への着手ができていない。
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今後の研究の推進方策 |
(1)は臨床応用を考慮した次のステップを立案する。(2)は症例数を増やしてisolatedcaseに関しても分析を試みる。将来的に予防や予後因子の解折に役立つか検討する。(3)は今年度にフォローアップのパラメーターを解析し国際学会で発表すると同時に英文雑誌に投稿する。(4)は現在、従来は捨てる乳歯の歯髄から採取した幹細胞を肝臓の機能を有する細胞へ分化が成功しつつあるので、これを応用して横紋筋への分化誘導を試みる。今年度中に横紋筋の性質を少しでももつ細胞が得られるようにする予定である。
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