研究概要 |
ヒト間葉系幹細胞には多くの"間葉系"組織に存在しており、圧倒的に組織量が多く、ドナー部位の機能的・整容的障害がほとんどない脂肪由来(間葉系)幹細胞を臨床的に採取し、その細胞を用いて、難治性慢性放射線障害部位の皮膚軟部組織の再生治療(5例)とHIV関連の全身性に分布するリポディストロフィー(脂肪萎縮)の再生(4例)、Crohn病(2例)、潰瘍性大腸炎(1例)の採取をし、細胞数検討と脂肪代謝を引き起こす薬剤(Atazanavir,ATV)を用いた脂肪幹細胞の分化抑制機構をBODIPY法、細胞死の増強、小胞体ストレス増強について検討した。脂肪幹細胞採取年齢は平均43.5歳(18~68歳)で、採取細胞総数は0.8±0.49×10^6細胞であった。全例再生治療に関して効果的かつ安全に再生治癒した。増殖期を過ぎた幹細胞にATV(0~20μM)で容量依存的にBODIPY法にて分化抑制した。また細胞死もATV添加0,10,20μMにて0.52±0.09,1.29±0.13,4.34±0.20%と容量依存的に増加した。ATVにより、細胞質内のunfolded protein response (UPR)はCHOP誘導率で0,20μMでおのおの、2.8±0.9,43.3±2.6%とATVにより優位に増加した。ミトコンドリア機能障害によるアポトーシス誘導は活性酸素の上昇はごくわずかであり、ATVによる脂肪幹細胞からの分化課程にて誘導される小胞体ストレスを増強し、アポトーシスを増強させると考えられた。 また、昨年来のHIV関連リポディストロフィーの移植脂肪の3次元CT定量検査では2~4倍の脂肪増強を最大6ヶ月の経過観察で認めた。 またミニブタを用いた急性放射線障害モデルとして放射線照射後(10Gy)の塩基性線維芽細胞細胞増殖因子(bFGF)の直後からの連続投与による皮膚軟部組織の防護効果は、機械的な伸展組織に対して表皮基底細胞の細胞増殖とCD34で示された真皮血管数の増加、アポトーシスの減少などを認めており、更に幹細胞移植の場合にはより効果的であると示唆された。同様に顔面発生と対比してのdifferential解析が必要と思われた。
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