研究概要 |
敗血症は現在も単一の根治的治療法が存在せず,死亡率の高い病態として知られている。敗血症の重症化には,血管内皮細胞障害が関与することが知られているものの,血管内皮細胞の分子レベルでの創薬には,未だ根治的なものが認められない。 本研究では,敗血症モデル動物として盲腸結紮穿孔による雄性BALB-Cマウスを用いた。これらの動物の右心房より採取した静脈血あるいは大腿動脈血の約1mLをethylene-diamine-tetra-acetic acid(EDTA)採血管に回収し,4℃の1%PBS緩衝液(phosphate buffered saline)6mlで希釈し,白血球系細胞の接着を抑制する目的でFcR拮抗薬(Miltenyi Biotec, Germany)を50μL加えた。以上の静脈血および動脈血サンプルに対して,CD146抗体IgGビーズを用いてcirculating endothelialcells(CECs)を沈下させることに成功した。これらのCECsは,正常BALB-Cマウスの1mLの血液中には観察されなかったが,盲腸結紮穿孔24時間のマウスの血液中には,約100/mLのCECsが検出された。 これらは,アルブミン,赤血球,および脂質の接着を高めると同時に,これらを貪食する傾向を示した。CECsが,どのようにアルブミンなどを貪食し,炎症病態の増悪をもたらすのかの詳細は未だ不明であり,来年度の研究につなげる予定である。
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