研究概要 |
敗血症は現在も単一の根治的治療法が存在せず,死亡率の高い病態として知られている。敗血症の重症化には,血管内皮細胞障害が関与することが知られているものの,血管内皮細胞の分子レベルでの創薬には,未だ根治的なものが認められない。 本研究では,敗血症モデル動物として盲腸結紮穿孔による雄性BALB-Cマウスを用いた。これらの動物の右心房より採取した静脈血あるいは大腿動脈血の約1mLの血液サンプルに対して,CD146抗体IgGビーズを用いてのcirculating endothelial cells (CECs)の沈下は,正常では観察されなかったが,盲腸結紮穿孔24時間のマウスの血液中には約100/mLのCECs,盲腸結紮穿孔36時間で約160/mLが検出された。このようなCECsの発現は,転写因子NF-κB活性を抑制するデコイ核酸で抑制された。 一方,盲腸結紮穿孔24時間レベルで血液中に発現したCECsは,アルブミン,赤血球などを貪食する傾向を示した。CECsの貪食能に対する炎症病態の関与について,来年度の研究につなげる予定である。 この研究は,敗血症に合併する播種性血管内凝固症候群の病態を,CECsの観点より解明しようとするものである。本研究により,敗血症罹患時の播種性血管内凝固症候群の早期診断と治療が可能となることを目標とする。
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