当研究室では、これまで短時間高血糖が内毒素血症ラットの腸管壁透過性亢進の増悪因子であることを明らかにした(平成22年米国麻酔科学会発表)。本研究計画の2年目となる22年度は、より臨床的な意義の深い長時間高血糖モデルにおいて、腸管透過性を増悪する要因の本体を探究するため、内毒素血症ラットと健常ラットを用い、24時間高血糖を維持したモデルを用いて腸管炎症反応を解析してきた。無作為に(1)健常ラット正常血糖群(80~150mg/dl)、(2)健常ラット高血糖群(200~350mgldl)、(3)内毒素血症ラット正常血糖群(80~150mgldl)、(4)内毒素血症ラット高血糖群(200~350mg/dl)の4群に割り付けた。24時間後に腸管組織(小腸および大腸)と腸間膜リンパ節(MLNs)を採取し、炎症性サイトカインTNF-α、IL-1β、IL-6のmRNA発現をreal-time PCR法を用いて測定した。その結果、小腸や大腸の腸管組織では全ての群で有意な発現元進は認めなかった。一方、MLNsは各腸管組織と比較し炎症性サイトカイン発現が明らかに増強していた。さらにMLNsのIL-6mRNA発現は内毒素血症高血糖群で有意に高く、内毒素血症等の全身性炎症反応下において、高血糖がMLNsにおける炎症性サイトカイン発現増強因子であることが示唆された。さらに、MLNsには多くのリンパ球サブセットが存在し、高血糖の影響はリンパ球サブセットにも及んでいる可能性がある。平成23年度では、これまでの研究結果を基に、高血糖による腸管関連リンパ組織(GALT)内リンパ球への修飾を探求すると共に、腸内細菌叢の調整(プロバイオティクス)が高血糖惹起性腸内細菌動態に及ぼす予防的効果を検証する予定である。
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