研究課題
【平成22年度研究目的】A3 adenosine receptor(ADR)が、生体に付与される侵襲によって好中球(PMN)が活性化されると、本来存在する好中球細胞質内から、細胞膜表面に析出してくる(Chen and Junger et al. Science 2006)報告を基盤に、平成21年度にはフローサイトメトリー(FACS)を用いてPMN表面のADRを測定する方法を確立した。平成22年度は、これを元に、敗血症や外傷など、各傷病に対して測定を実施し、(1)健常人と各傷病群との比較、(2)従来の炎症マーカーとの経時的変化の比較、(3)重症度評価スコアとの相関性、を明らかにすることを目的とした。【結果】(1) 各傷病におけるA3ADR発現率:健常人6名、敗血症患者5名、外傷患者5名、熱中症2名、CPA3症例について、FACSを用いてA3ADRを測定した。敗血症群は有意に健常人と比較して高値であり、外傷群では受傷後7日以内では明らかな有意差を認めないが、受傷後7日以降では有意な上昇を認めた。(2) 従来の炎症マーカーとADR発現率の変化:CRP及びWBCの経時的変化とほぼパラレルにA3ADR発現率は変化が見られ、従来の炎症マーカーとの相関性が明らかであった。また、フリーラジカルと有意な相関を認めないが、白血球変形能、抗酸化能と有意な相関を認めた。(3) 重症度スコアとADR発現率の検討:APACHE II scoreと有意な相関は認められなかった。【結語】A3ADR発現率は、白血球数やCRPなどの従来の炎症マーカーと有意な相関を認め、好中球の活性化を示す変形能・抗酸化能との有意な相関を認めた。また、敗血症や外傷侵襲後7日以降で著しく高値となり、活性化した好中球の状態を反映するbiomarkerとなりうる可能性が示唆された。
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