研究概要 |
中胚葉或いは神経堤由来細胞を標識できるマウスを用いて、歯の間葉細胞の大部分が神経堤に由来し、一部は中胚葉に由来することを明らかにした。またこれらの間葉細胞の性質や細胞表面の受容体の発現を調べた所,神経堤に由来する歯の間葉細胞は、主にPDGFR-alpha或はPDGFR-betaを高発現し、一方中胚葉に由来する細胞は、PDGFRを発現せず、主に血管内皮様の分子を発現する事がわかった。また、間葉系幹細胞の試験管内検出法である、colony-forming unit-Fibroblast(CFU-F)を調べた所、歯の間葉系幹細胞様の性質を持つのは神経堤由来の細胞であり、これらの細胞は、象牙芽細胞のみならず、軟骨細胞,脂肪細胞、骨芽細胞への分化能を併せ持つことがわかった。また、CFU-Fを形成する細胞が、2次コロニー形成能を持つかを検討した所、歯の神経堤由来細胞は、2次コロニー形成能を持ち、またコロニーは単一細胞由来である事から歯には脂肪細胞や骨芽細胞や軟骨細胞への多分化能を持つ細胞が存在する事を明らかにした。 さらに、我々は神経堤或は中胚葉由来細胞を蛍光蛋白YFPで標識できるマウスから、多数のES細胞株を樹立した。このES細胞株を用いて、YFPを指標に神経堤細胞系譜或は中胚葉系譜の細胞を単離し、まずは神経堤細胞系譜として知られる色素細胞の分化誘導系にて色素細胞がYFP陽性細胞から誘導されることを確認した。さらに、これらの神経堤細胞を標識できるES細胞株から色素細胞のみならず、神経や骨芽細胞、脂肪細胞等が分化誘導できることも確認した。また歯の象牙芽細胞に特異的に発現するDSPP遺伝子座に蛍光蛋白GFP遺伝子を挿入したES細胞株を樹立した。現在、象牙芽細胞を標識できるES細胞株を用いたキメラマウスの作製を行なっている。
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