研究課題/領域番号 |
21390489
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
山崎 英俊 三重大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00283987)
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研究分担者 |
山根 利之 三重大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (30452220)
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キーワード | 神経堤細胞 / 象牙芽細胞 / 胚性幹細胞 / 歯髄間葉細胞 / 中胚葉 / 骨芽細胞 |
研究概要 |
これまで中胚葉或いは神経堤由来細胞を蛍光標識できるマウスを用いて、歯の間葉細胞は、殆どが神経堤に由来し、PDGFRを高発現し、高いコロニー形成能を示すことを明らかにした。また、これらのコロニー形成細胞は2次コロニー形成能を持ち、歯の間葉系幹細胞は神経堤に由来することを明らかにした。 本年は、PDGFRに対する阻害抗体を加える事で、これらのコロニー形成が抑制され、また1次コロニー形成時に阻害抗体を加えると、2次コロニー形成能を失う事から、歯の間葉系幹細胞はPDGFRのシグナルに依存していることを明らかにした。神経堤或は中胚葉由来細胞を蛍光標識できるマウスから、多数のES細胞株を樹立した。このES細胞株を用いて、蛍光を指標に神経堤或は中胚葉系譜の細胞を単離し、神経堤細胞系譜の色素細胞が蛍光陽性細胞からのみ誘導されることを確認した。さらに、このES細胞株から色素細胞のみならず、神経や骨芽細胞、脂肪細胞等が分化誘導できることを確認したが、これら多分化能を示す神経堤細胞が一つの細胞に由来するか否かは明らかに出来ていない。歯の象牙芽細胞に特異的に発現するDSPP遺伝子座に蛍光蛋白遺伝子を挿入したES細胞株を樹立し、このES細胞を神経堤細胞へと試験管内で誘導し、象牙芽細胞への分化を試みたが残念ながら蛍光蛋白陽性の細胞は誘導できていない。しかし、このES細胞を神経堤細胞に分化誘導させた後にコラーゲンゲルと混ぜて腎皮膜下に移植することで、蛍光蛋白の発現を誘導することに成功した。現在、歯胚の上皮細胞を単離し、その上で細胞培養を行ない、蛍光の発現、及び象牙芽細胞の分化誘導の条件を検討している。本年計画した象牙芽細胞を標識できるES細胞を用いたキメラマウスの作製及び成体内解析は、生殖キメラマウスの作製が遅れていることから進んでいない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
象牙芽細胞を特異的に蛍光標識できる胚性幹細胞を作製し、その幹細胞株よりキメラマウスを作製したが生殖キメラマウスが未だに得られていない。そのため、キメラマウスを用いて、生体内での歯の象牙芽細胞の解析が進んでいない。しかしながら、象牙芽細胞を蛍光標識できる胚性幹細胞株を神経堤細胞系譜に試験管内で培養誘導する系を確立し、腎皮膜下に移植する系を用いて、蛍光を発現する系を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、象牙芽細胞を特異的に蛍光標識できる胚性幹細胞株の樹立はできたものの、遺伝子組み換えの生殖キメラマウスの作製に時間がかかり、予定通り進まなかった。本大学ではこれまでaggregation chimera法にてキメラマウスの作製を行なっているが、新たにblastocyst injectiionによるchimera作製に替えた。今後は、生殖細胞系列に当該遺伝子を持つキメラマウスを作製し、これらのマウスでの蛍光遺伝子の発現を歯等で確認する。本マウスを神経堤或は中胚葉由来細胞を別の蛍光蛋白で標識できるマウスと交配し、象牙芽細胞が神経堤細胞から分化誘導されるのを成体内で観察する。最終目標は、試験管内で胚性幹細胞或は神経堤細胞から象牙芽細胞が誘導される系を確立し、象牙芽細胞に運命決定した細胞の分化能の検討である。しかし、胚性幹細胞から象牙芽細胞への分化誘導に、我々を含め多くの研究者が試みているが未だに成功していないので、歯上皮上で培養する等工夫をし、また歯上皮の専門家等、いろいろ分野の方に相談し、助言を参考に、全力で解決に試みる。
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