最終年度は、[1]我々が樹立したDspp遺伝子座に蛍光遺伝子GFPを挿入した胚性幹細胞株(Dspp-KI-GFP)を用いてブラストインジェクション法にてキメラマウスの作製及び生殖細胞キメラマウスを樹立する計画を立てた。3回のインジェクションにて約10頭のキメラマウスを得たが、残念ながら生殖キメラマウスの樹立にはいたらなかった。現在、再度生殖キメラマウス作製を行っている。 本年計画した[2]同生殖細胞キメラマウスを用いた胎生期から成体マウスの歯胚或は歯髄細胞でのGFPの発現時期及び部位の確認、及び全身でのGFPの発現の有無の確認。フローサイトメーター及び切片作製は遂行できていない。 [3]Dspp-KI-GFP胚性幹細胞株を用いて、GFPを指標に象牙芽細胞への分化誘導系の確立を目指したが、残念ながら歯胚の上皮細胞を単離し、間葉細胞と共培養し、象牙芽細胞を誘導する条件の確立にはいたらなかった。しかし、放射線照射したSwiss3T3細胞上で歯胚上皮細胞を選択的に増殖維持するための系を確立した。また、我々は、これまで神経堤細胞を蛍光標識できる胚性幹細胞を用いて、試験管内で無血清、無フィーダーで少なくとも硬組織や色素細胞への分化能を有する神経堤細胞の誘導系を確立した。上皮を別の蛍光標識する系を用いて、増殖させた歯上皮上で胚性幹細胞及び神経堤細胞に分化誘導した細胞の培養を進めているところである。 [4]Dspp-KI-GFP胚性幹細胞株を無血清、無フィーダーで培養し、神経堤細胞に誘導した後、腎皮膜下に移植し、神経堤細胞からGFP陽性細胞が誘導される系を確立した。 今後は、本研究課題で立案した、象牙芽細胞を蛍光標識できるマウスの作製と試験管内及び生体内で神経堤細胞から象牙芽細胞への運命決定機構を解明したいと考えている。
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