研究課題
現在までに甘味、苦味、酸味、塩味、旨味が味として認められ5基本味と言われている。脂肪は3大栄養素の1つであるが、味を提示する物質ではなく油(脂)の味は5基本味にも入っていない。一方、我々は味が油で大きく変わることを日常経験しているが、そのメカニズムは不明である。そこで我々は味蕾で甘味、苦味、旨味のシグナルトランスダクションに関わるTransient receptor potential M5 (TRPM5)チャネルの関与を明らかにしようと研究を進めている。TRPM5チャネルをHEK293細胞に強制発現させ、パッチクランプ法ホールセルモードで膜電位固定下に膜電流を計測した。Ca^<2+>とEGTAを用いて電極内液の細胞内遊離カルシウム濃度([Ca^<2+>]_i)を0.6μMに調整し、細胞外から10μMのアラキドン酸を投与した。逆転電位が約8mVの外向き整流性を示し電流がアラキドン酸により惹起された。これらの電気生理学的性質からアラキドン酸はTRPM5チャネル電流を惹起したと考えられる。一方、細胞内遊離カルシウム濃度を低くするためにCa^<2+>を含まずEGTAを含む電極内液を用いてホールセル法を確立した。細胞内の遊離カルシウム濃度が低い場合、外液からアラキドン酸を投与してもTRPM5チャネル様の外向き・整流性電流は惹起されなかつた。これらの結果は脂肪酸によって味蕾に発現するTRPM5チャネルは活性化されない、つまり、TRPM5チャネルを介しては味として認識されないことが示唆された。
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