研究概要 |
本年度は、歯周病原菌Porphyromonas gingivalis TDC60(II型)のゲノムプロジェクト解析の終了を進め、染色体マップの作製に成功した。TDC60株は、全長が2,340,032bpからなる環状DNAで、プラスミドの存在は認められなかった。I,IV型P.gingivalisの染色体の複製開始点でのゲノム配列は保存されていたが、TDC60株でも保存されておりその他の部位では非常にランダムにゲノム構造が入れ替わっていることが判明した。60aa以上のORFとして、1,874ORFの確定を終了した。I型ATCC33277では、20aa以上のものが約2,000と報告されていることから、ORF数としては同じくらいになると想定している。Conjugative transposonを介して、ATCC33277、W83とは異なる遺伝子群が入り込んでいることから、新規病原因子の存在が示唆される。また、ゲノム構造の変化が非常に大きく、同じISが数十ヵ所に散在しているため、この部分を全て検討する必要がある。今後、完成したII型TDC60株ゲノムデータベースを利用して歯周病の効果的な新規治療標的分子を探索し、当研究室で構築したゲノムデータベースを基盤に、臨床で実用化可能な安全性の高いヒト型中和抗体の作製が可能なった。また、歯科界初といえるIT創薬の開発のステップとしてTDC60株の特異分子の探索を行ったところ、他の菌株でminor/short線毛分子がTDC60ではmajor/longerであることが判明し、本株の重要な治療標的分子であることが示唆された。
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