研究概要 |
高齢者における歯の喪失は、歯周疾患による歯槽骨吸収が大きな原因を占める。そして、歯の喪失は発音機能や咀嚼機能の低下を招き、全身の栄養状態やQOLの低下にもつながることが、高齢化社会の到来と共に問題となっている。歯の喪失部位には、常に歯槽骨吸収が惹起されるため、義歯の装着による咀嚼機能の回復は十分なものではない。そこで、歯槽骨吸収に直接関与する破骨細胞の分化誘導機構について解析を行った。 単球・マクロファージの増殖およびマクロファージから破骨細胞への分化に必要であるM-CSFを欠損した。op/opマウスは、単球減少症および破骨細胞欠損による大理石骨病を示す。強力な活性型ビタミンD_3(1,25D_3)誘導体である2MDをop/opマウスに投与すると、破骨細胞が多数誘導される。最近、M-CSF受容体の第二のリガンドとしてIL-34が発見された。そこで、2MDによるM-CSF非依存的な破骨細胞形成におけるIL-34の役割について解析した。 骨髄マクロファージ培養系にRANKLとともに、M-CSFあるいはIL-34を添加し、破骨細胞形成を解析したところ、IL-34の破骨細胞誘導活性は、M-CSFと同等であった。1,25D_3の標的組織におけるIL-34の発現を解析したところ、IL-34は脾臓での発現が高く、2MD投与24時間後に更なる発現上昇が認められた。骨におけるIL-34の発現レベルは低く、2MDによる発現上昇は認められなかった。IL-34の発現組織である脾臓における破骨細胞の出現について検討したところ、op/opマウスにおいて、2MD投与48時間後にTRAP陽性単核細胞数の増加が認められた。96時間後には、骨において破骨細胞形成を認めた。さらに、op/opマウスにおいて、脾摘を行った後2MDを投与したところ、2MD投与による骨における破骨細胞形成を認めなかった。 以上の実験結果より、op/opマウスにおいて、脾臓は1,25D_3による破骨細胞形成に必須の組織である可能性が明らかとなった。また、IL-34は1,25D_3の新たな標的遺伝子である可能性が示された。
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