研究概要 |
本研究では、免疫細胞と標的臓器細胞の両面から視点に立った上で、全身免疫系の中で標的臓器における免疫システムがどのように働いているのかを可視化するために、免疫細胞のバイオイメージ技術を駆使して「臓器-免疫ネットワーク」の詳細を明らかにする。具体的には自己免疫疾患モデルを用いてこれまでに報告してきた免疫細胞及び標的細胞の自己反応性に重要な分子をメルクマークとし「臓器-免疫ネットワーク」の障害による自己免疫病変の発症機序の全容を明らかにする。さらに、モデルにおいて疾患の各病期での「臓器-免疫ネットワーク」の詳細な変化に基づいて新たな診断、治療法の開発を目指す。本年度の研究成果として、エストロジェン欠乏で唾液腺組織に形質細胞様樹状細胞が有意に浸潤していることが判明し、シェーグレン症候群の病態との相関が示された(Am J Pathol 174, 1715-1724 2009)、標的臓器内での免疫細胞のNF-κBシグナルに関しても現在検討中である。また、シェーグレン症候群のモデルを用い、病態発症における環境因子の中で内分泌かく乱物質の一つとして知られているダイオキシンがT細胞分化に影響を及ぼし、NF-κBをはじめとした免疫制御因子の発現パターンに大きな影響を与えることにより、自己免疫疾患の発症に繋がることを明らかにした(J. Immunol. 189, 2009)。加えて、自己免疫疾患における調節性T細胞に関して、ケモカイン受容体の一つであるCCR7を介した調節性T細胞の制御機構を解明し、シェーグレン症候群の病変局所と調節性T細胞の関係を報告した(PLoS One. 5, 2010)。調節性T細胞におけるMAPKあるいは.NF-κBシグナル異常と免疫制御機構に関しても、現在詳細な検討を続けている。
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